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今日も独り言

言葉を話せない動物と、動物の言葉がわかりたい獣医師、そして動物の先生なんだから動物のことは何でも知っているだろうと思っている飼い主さん、その微妙な関係の物語が、ここ動物病院では毎日繰り広げられている。そんな、獣医のひとりごと・・・ 

『インフォームド・コンセント』一時は人医で、しばらくしてから獣医で盛んに語られることになったこの言葉は、本当は獣医では成り立つはずもない。 

まず第一人称である患者こと病気になった動物が、話を理解してはくれない。第二人称である獣医が、この病気の説明と治療法への力説をどれだけしても、第三人称の飼い主さんがそれに納得してくれるか、結局はそこにたどり着いてしまう。 

たとえば、我が子をなんとか助けてあげたいとの切なる思いからどんなに説得をしても、所詮、その第一人称である患者が、「嫌だ、絶対手術なんか受けるもんか」「まだね、せっかくいっちょまえになって、これから楽しく遊びたいのに、そんな怖いこといやだ」「金に糸目など付けずに、最高の医療を頼みます。私には飼い主様をまだまだ元気付ける使命が終わっていませんから」「みんなの気持ちは痛いほどにわかりました。でもね、私もそろそろ限界なのよ。もう大好きなママとはあまり離れずに寿命を全うしたいのよ」などなど思っているのかも・・・。 

こんな、一番のその声がやはりわからない。そんなジレンマだらけの毎日が、続いているといえば続いているのです。 

だから、自分たちがその狭間の中でどう感じて、どう悩んでいるか、日々の診察の中で考え想う心の内側を少しだけでも表現しようかと、このシリーズを始めてみようと思います。 

題して、今日もひとりごと。

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